Sugarless




<英二サイド>









部活がなくなって暇になって…。

暫く友達と喋ってた。

何故か流れ的に『賭け』の話になって、興味が失せてる俺は適当に相槌を打ってた。

あんまりにもシツコイからさ?

言うよ、俺の気持ち。

勿体ないけど、このままじゃ意味ないもんね。


「あのさ、あの賭けやめるよ、俺。」

「はぁ?今更何言ってんだよ。折角結果が出そうなのに…。」


結果?そんなもの…!


「出ないよ、結果なんて。…じゃあ、俺の負けでいいや。俺はおチビを抱く気はないし。」

「…何だよ、興醒めだな…。ま、約束通りコレは貰っとくぜ。」

「あぁ、いいよ。手に入れるの簡単だし。」


ソイツが満足そうに持って行ったのは煙草。

最近じゃコンビニや自販じゃなかなか買えないからな…。

こういう時、兄ちゃんとか居ると助かる。


「ふぅ…っくそ!俺は何がしたかったんだ…?!」


俺以外誰も居ない教室で、思い切り机を殴る。

本当に、自分が解らない…。

おチビの事を…最初は抱くつもりだった。

でも…今は…

何なんだ…?結局おチビを傷つけただけじゃないか…。


「上手くいかないもんだな…。本気の恋愛って…!」


今、俺は何を言った…?

『本気』あまりにも今の俺には似つかわしくない言葉。


「いつの間にか…俺が罠に嵌ってたのか…。」


苦笑しながら、煙草を口にする。

苦い煙が、俺の燻った心を表しているようで腹が立った。


パタパタパタ…


「廊下を走る音…?…まさか?!」


こんな時、俺の勘は嫌と言うほど当たる。

廊下に出ると、案の定リョーマと、その後ろを不二が追うように走って行った。


「くそっ!聞かれてたか…しかも一番イヤな所だけ…!」


体全体に虫酸が走る。

自然と、二人を追うように足が動いていた。






「…何処に行ったんだ?!」


昇降口から見失って、ウロウロと校舎裏を彷徨う。

…居た。

何だ、不二の奴。おチビの肩抱いちゃってさ…。

そっか、そういう事なの?


「っ英二、先輩……。」

「英二…!」


おチビは怯えた目で、不二は凄い形相で睨んでくる。

…二人とも、俺が賭けを止めた所まで聞いてなかったみたいだな。


「…英二先輩…俺で遊んでたんですか?」


そんな目で見ないでよ…。

やっと『恋』を自覚したってのに…。


「…………。」

「答えて!英二先輩…!」


…不二、おチビのこと大事そうに抱いてる。

そっか…、ならその方が幸せだよね?


「あぁ、本当だよ?ずっと、おチビで遊んでた。薄々気付いてたんじゃない?」


俺は…卑怯者でいい。

それなりの事をしてしまったんだ。

今更好きになってだなんて都合の良い事は言わない。

…おチビにも心当たりがいくつかあるんだろうな。

俺の台詞に涙を流した。


「…別れていいっすよね?もともと、付き合ってる雰囲気なんてなかったし…。」


押し殺した声で呟くおチビ。

…うん。それでいいんだよ。


「…いいよん♪良かった〜、俺気になる子が居てさ?これでやっと告れるよ。」


激怒した様子の不二にピシャリと頬を打たれた。


「君には良心がないのかい?…感情が欠落してるね。」


不二はおチビを連れてそのまま去って行った。

その時の二人の顔は忘れられない。

…きっと、一生記憶に残る。


「嫌われ者は俺一人でじゅ〜ぶん!」


だってそうだろ…?

俺の所為でおチビは傷ついた。

おチビが好きな不二は傍で見ていてもっと辛かったかも…。

大石だって、傷つけた。

おチビの事が好きな他のレギュラーだって…。

俺は皆を傷つけた。

だから…今更弁解なんて情けない真似はしない。


「おチビ…不二と幸せになってね……。」


もう、どうでもいい…。

俺の本気の恋なんて、不二達に比べたら「まだまだ」だから。

だから…幸せになって…。

愛した者に願う、心からの気持ち。


「バイバイ、おチビ…。愛してた…いや、愛してる。」




遅かった告白。そして懺悔。